5月、中間試験(筆記) ページ4
5月になると、筆記の中間試験が行われる。生徒は試験に向けて勉強を頑張るけれど、教員達は生徒が解けるような問題を作らなければいけない。
「テスト作りかぁ」
わたしは試験問題作りに悩んでいた。ひとまずは授業で行った内容の復習ができるようなものにしなきゃ、とは考えているけど。
実技の試験だったら「錬金術でこういうものを作ってね」と材料と錬金術の道具を用意して終わりだ。
生徒だった頃は筆記試験のプリントはあらかじめ用意されているもので、それを制限時間内に解けばよかった。
だけど、今回はそうもいかない。教員として、自らが筆記問題を作らなきゃいけないのだから。
「記述が長くなるのはやめた方がいいよね……穴埋め問題とか? でも簡単すぎるのもよくないし」
教科書を参考にして、記述問題と穴埋め問題とか語句を選ぶやつとかを組み合わせて作ってみた。うーん、なんかそれっぽい。
一人で満足感に浸る。あ、自己満足じゃ駄目だった。
ひとまず問題はできたのでひと安心する。
「試験問題作るのって結構大変なんだなぁ……」
思わぬところで先生達の苦労を知った。これ、テスト前に毎回やるのか……大変だな。
×
中間試験が終わると、6月の体育祭に向けての準備が始まる。
まだいつも通りの授業だけれど、もう少ししたら体育祭の練習とかで授業時間を開けなきゃならなくなる。だから、少し早めに授業を進める。
ふと外に目を向けると、グラウンドで飛行術を行っている様子が確認できた。
自身が生徒だった頃のことを少し思い出す。飛行術でめいいっぱい空を飛んでいたこととか。
今はもう大人なのであんまり飛行術で空を飛ぶようなことは無くなってしまった。それを思うと、生徒として飛行術の授業でめいいっぱい空を飛ぶ生徒達は羨ましい存在なのかもしれない、と思ってしまった。
「(飛行術で空を飛ぶ……かぁ。どこか飛べるところとかあったかなぁ)」
場所を借りれば飛べなくもないし、日常的な移動で飛ぶのも珍しいわけではない。ただ、授業中のように思い切りやる機会が無くなってしまっただけで。
山や草原などに行くのは良いかもしれない。強い魔物が出ない場所に限られるけど。素材を集めるついでに思い切り飛べそうな場所を探してみようかな。
ぼんやりしていたら生徒に「大丈夫ですか先生ー」と心配されてしまった。
「あ、なんでもないよー。ごめんね、ちょっとぼんやりしてた」
えへへ、と曖昧に笑って誤魔化す。誤魔化せてないけど。
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作者名:鬼灯 | 作成日時:2024年4月10日 14時