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「息子さんのお名前って、阿部亮平さん…?」
みどり「そうそう〜よく覚えてるね〜」
話したことあったっけ?と首を傾げるみどり先生。
こうして見たらそっくりじゃないか。
もう隠してたっていつかバレる気がするけど、勝手に話すのも気が引けるし…でもみどり先生が広めたりするような人じゃないのは私もさっくんもよく知ってるし…
って悶々としていたら、保育室のドアが控えめに開いた。
佐「ちょっといーい?」
そこに居るのは小声で私を手招きする佐久間先生。
何事かと思えば行事の係の話で、彼の手にはこいのぼりのイラスト付きのレジュメが。
幼児クラスと乳児クラスの段取りの確認をして、「そんだけ〜ありがと〜」って行っちゃいそうになるさっくんのTシャツの裾を思わず掴んだ。
何かのアニメのやつ。うち、服装は動きやすければ基本自由だから。
「なに?」って不思議そうなさっくんに、ただでさえ子ども達を起こさないように潜めていた声をもっと抑えて。
「みどり先生と阿部ちゃんって親子なの?」
佐「にゃ?なんて?」
「だからっ…」
なんでそんな大事なこと言ってくれなかったんだ!ってプチパニックになっている私は早くどうにかして欲しくて。
さっくんの腕をグッと引いて耳元で同じことを呟いた。
すると何故かピキッて固まるさっくん。
「佐久間せんせ?」
佐「あ…ごめん、え…なに?」
「聞いてなかったの…?!」
佐「ああ、いや…えーっと、みどり先生が阿部ちゃんの母ちゃんって話か……」
耳を触りながらしどろもどろ。
急にショートしたみたいになってる。
さっくんは前から知ってた側なのになんでそうなる?
混乱してるのはこっちなんだけど!
「なんか…暑い?」
佐「…んや?」
「暑そうだけど」
佐「あははー…やっぱちょっと暑いかも?休憩室で涼んで来るわ!」
「え、ちょっ…話してもいいの?みどり先生に」
また行っちゃいそうになるさっくんを捕まえて聞くと、みどり先生にはいーよって早口で言いながら頷いて、私が手を離したらそそくさと居なくなっちゃった。
なーに?あれ。
まあ、さっくんの許可も得たし…とみどり先生に息子さんの仰っている「新しい入居者」が自分だってことを打ち明けると、一瞬目を丸くしたあとに
みどり「世間って狭いね〜」
とにこにこ。
「Aちゃんが居るなら頻繁に遊びに行っちゃおうかな」なんて笑う先生はいつも私に良くして下さるのだ。
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作者名:あむ | 作成日時:2024年4月5日 23時