鉢合わせ ページ19
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その日はたまたまイレギュラーなシフトだった。
研修の兼ね合いで、12時過ぎには家に着いた。
だから、リビングに一歩足を踏み入れて目を見張った。
ラ「っ…！」
「あ…」
スラリと伸びた脚に、端正な顔立ちの少年を前に固まってしまったのだ。
この子が…ラウールくん。
初めて顔を合わせた彼にどう接していいか分からなくて、気の利いた何かも言えないし軽くパニックになる。
え、どうする？もう1回外に出たほうがいい？
でも明らかに目が合っちゃったし…
間違えました！って言う？いや何を？
なんて1人ノリツッコミをする始末。
すると、「あの…」っておずおずと声を掛けてくれたラウールくん。
「は、はい！」
ラ「ここ…通りますよね？
僕のことは気にせず普段通り過ごして下さい…」
如何にも。私の部屋に辿り着くには必ずリビングを通らないといけなくて、私がこんなだから気を遣わせてしまった。高校生の男の子に。
「ごめんなさい…極力顔合わせないようにするので…」
ラ「や、それは…その……」
あれ？
女性に対してあまり良い印象は無いと思ってたから、今この時間だけでも心苦しかったのに歯切れの悪い返事に疑問を抱く。
ラ「僕だけ仲良くなれないのは……寂しいんで…」
えぇ…？なにそれ……
照れたようにぽそっと呟いた少年があまりにも可愛い。
それはずるいよ…
だからってグイグイ距離を詰めようなんて気はさらさら無くて。
「…じゃあ、怖かったりやだったら遠慮無くすぐに言って下さい。
私に直接言いづらかったら他の皆さんに言って貰って大丈夫なので。」
ラ「…はい」
ほっとしたようにふにゃりと笑うラウールくんはあどけなくて、こんな子を追いかけ回すなんてなんて事を…という気持ちになった。
まだ制服を着ているところを見るとラウールくんも今帰って来たところなのかな？
「あの…良かったら何かお昼…作ろうか？」
ラ「え！いいんですか…？」
「自分の分作ろうと思ってたから…簡単なので良ければだけど…」
ラ「嬉しい…」
控えめに呟く姿にまた胸がほわわって癒される。
皆さんが過保護になる気持ちがよく分かった。
「着替えて来ますね」ってラウールくんが2階に上がった間に、私も荷物を置いてお昼ご飯の用意に取り掛かった。
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「そんなに見られると…」
ラ「だってAさん、手際良いんだもん」
カウンターからじっと見られて手元が狂いそう。
そんな見せるような腕前じゃないんだってば…
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作者名：あむ
| 作成日時：2024年4月5日 23時
