・ ページ26
.
「やな感じでした？私」
深「んーや？全然？」
アイスが段々溶けて来て食べやすくなった。
その代わりに冷たくなった手を、袖を伸ばして仕舞い込む。
深「なんかねぇ…出遅れちゃったなあと思ったのよ」
「ん？」
深「いつの間にか照もなべも舘さんも前から友達だったみたいに喋ってるし、ラウールも懐いちゃってて、あれ？って。…焦っちゃったんだよね」
新入りと必ずしも仲良くしなければならないなんてルールは無いし、価値観だってそれぞれだし。
私と仲良くないからと言って彼にはなんの支障もないはずなのに…気に掛けてくれていたらしい。
深「寂しいじゃん？」
ラウールくんと同じことを口にする。
それがなんだか、"家族"って感じがして。
ほっこりした。
「私が言うのもおかしな話ですけど、無理に仲良くしようとしなくていいんですよ？」
深「…Aちゃんはやなの？
俺と仲良くすんの」
急に捨てられた子犬みたいな目で見上げてくるからングッてアイスが喉に張り付く。
「嫌なわけ…ないですけど…」
深「じゃあそんな線引かないでよ」
「深澤さんが焦るとか言うから…」
深「それ。」
「え？」
深「なんで俺は"深澤さん"なの？」
なんでって…
そう言われて思い返すと
さっくんは前からずっと"さっくん"だし…
"阿部ちゃん"、"康二くん"、"照さん"、"ラウール"くんは最初に耳にした呼び方とか…呼びやすいからなんとなくで今の呼び方でしょ？
宮舘さんはお店に通ってる内に、みんなに釣られて"舘さん"って呼ぶようになって…目黒さんは私の方が歳上って分かると「蓮でいいよ」って頑なに譲らなくて。
最近やっと"蓮くん"で折れて貰ったところ。
確かに、"深澤さん"は他人行儀すぎるかもしれない。
でも…
「渡辺さんも渡辺さんですよ？」
深「だってなべは友達の上司らしいじゃん。
俺とAちゃんはなんも気遣う間柄じゃないのになべとおんなじ扱いって…気に食わない」
ツンと唇を尖らせる深澤さん。
この人…絶対モテる。
康二とはまた違ったタイプの人たらしだ。
深「"辰哉さん"って言ってみ？」
アイスのプラ容器を咥えたままニィッって笑うこの人はやっぱり全部計算し尽くしてると思う。
「"ふっかさん"…で。」
深「…まあいっか。
んじゃぁそろそろ帰りますか？」
殆ど同じタイミングで空っぽになったアイスのゴミをサラッと回収して捨ててくれた。
いつの間にか、1人分空いてた距離も半分に。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 996人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あむ
| 作成日時：2024年4月5日 23時
