さよなら ページ32
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「雨ですねぇ…」
みどり「雨だねぇ…」
ザーザーと降り注ぐ雨。
かれこれ1週間丸っとこんな調子だ。
本格的に梅雨入りして、湿気と共に私達の気分もなんだかジメッとしちゃう。
みどり「なーんか気分上がんないよねぇ」
「私雨の日頭痛くなっちゃうんですよね…」
みどり「あー…偏頭痛持ち？しんどいねー…」
こうも雨続きだと子ども達もあまり機嫌が良くない。
さっくん達の受け持つ幼児さんは特に。
有り余るパワーを発散出来なくて食事の進みも悪ければ寝付きも悪くて、この時期はいかに室内で楽しい活動を持ってくるかが鍵なのだ。
でもさっくんのクラスは毎日楽しそうで、さっくんが楽しんでるからかなーって見かけると元気を分けて貰える。
みどり「丁度先生が帰るくらいの時間が一番酷いみたいよ？」
「えー…こんな日に限って遅番…」
みどり「ツイてないねー…」
こればっかりは仕方の無いことだけど、ほんとに私って運無いんだな…ってちょっと落ち込む。
追い討ちをかけるみたいに今日は延長保育の子ども達のお迎えも遅くて。
みんなこの大雨で道も電車も混んでるみたい。
本来の退勤時間を30分程過ぎてやっと退勤できて、傘なんて意味ある？ってくらいの雨の中駅に辿り着いた。
電車が止まってなかったのは不幸中の幸い。
ギュウギュウの車内で眉間に皺が寄っちゃうのは許して欲しい。
頭痛がピークに達した頃、最寄りに着いてやっと一息つけたと思ったのに。
神様ってほんと意地悪。
「A…」
「なんで……」
傘をさして歩き出した途端、視界に割って入った人。
久し振りに見る、元恋人の姿だった。
私達を迷惑そうに見ている人が居ることに気付いてハッとする。
駅の出入り口のど真ん中に突っ立ってたらそりゃ迷惑だ。
「ちょっとこっち…」
端に誘導すると大人しく着いてくる光輝くん。
屋根の無いそこでこの雨の中立ち話する人なんて他に居ない。
最後に顔を合わせたのがいつだったかすら覚えてないくらい、私達はすれ違っていたけど…それでも彼がなんとなく疲れてるんだろうなっていうのは分かる。
3年も一緒に居たんだもん。
それよりもっと長い間、私はこの人だけを目で追ってたから。
「…なんでここに居るの」
光輝「……ごめん。職場から着いてきた。」
絶句した。
人が多かったとはいえ…全く気づかなかった自分の危機管理能力の低さにも呆れるし、彼がそんなことをする人だとも思ってなかったから。
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作者名：あむ
| 作成日時：2024年4月5日 23時
